鉄鋼業界におけるCO2排出量の削減を目指す
DevH2forEAFプロジェクトは、石炭・鉄鋼分野の研究プロジェクトを支援するEUの資金援助プログラム、石炭鉄鋼研究基金(RFCS)への142件の提案から選ばれました。欧州グリーン・ディールの目標に沿ったRFCSは、鉄鋼生産プロセスにおけるCO2排出量の削減を目指しています。
DevH2forEAFプロジェクトの参加企業・団体(RINA-CSM、RWTH-IOB、CELSA GROUP、Ferriere Nord、SMS Group、AFV Acciaierie Beltrame、Nippon Gases Italia)は、電気炉における化石燃料の使用量削減に取り組みます。
欧州における電気炉の重要性
EAF(電気炉)は、鉄鋼生産に使用される炉の一種です。
欧州では、鉄鋼生産における電気炉の重要性が増しています。現在、電気炉による鉄鋼生産は生産量全体の約 41.5%、年間 6,900 万トンを占め、高炉や酸素転換炉による鉄鋼生産に比べ著しく高い状況です。(イタリアでは 81%、スペインでは 61%)
電気炉におけるエネルギー消費量とCO2排出量
現行の電気炉では、スクラップ溶解と精錬におけるエネルギー消費量は、必要な全エネルギーの25%から45%となります。天然ガス、メタン、その他の化石燃料は、40~80 kWh/t(キロワットアワー毎トン)のエネルギーを供給します
例えば、100トンの鉄鋼を生産するためには、370~750Nm3の天然ガスを燃焼する必要があり、0.75~1.5トンのCO2を排出することになります。欧州の鉄鋼生産全体において、天然ガスのわずか10%を水素に置き換えるだけで、年間10万トンという大幅なCO2排出量削減を見込めます。
DevH2forEAFプロジェクト
DevH2forEAFプロジェクトの主な目的は、電気炉による鉄鋼生産において、天然ガスに代わり、水素を燃料としたバーナを開発し、実用化を図ることです。この実現に向けて、以下の取り組みが必要になると認識しています:
- 天然ガスと水素の混合ガス(最大100%水素)で運転可能なバーナの設計・開発を行います。(バーナは、電気炉の運転条件下で機械的および熱的耐性を確保する必要があります。)
- 開発した水素バーナを工業炉へ導入するにあたり、パイロット設備での試験、性能確認を実施します。
- リスク分析を行い、電気炉での製鋼プロセスにおける水素利用のリスクと対策を検討、策定します。貯蔵、輸送、利用時の課題を特定し、リスクを最小化する必要があります。
- 開発した水素バーナの性能を、2つの工業炉での試験を通じて分析します。
Nippon Gasesの役割
Nippon Gases Italiaは、お客様における化石燃料の使用量と温室効果ガスの排出量を削減するため、新技術の開発に取り組んでまいりました。
DevH2forEAFプロジェクトでは、天然ガスと水素の混合システム、供給ライン、水素貯蔵タンクの設計に携わります。また、製造現場にバーナを設置する際の安全規定を定め、リスク管理計画を作成するための分析を行います。
当プロジェクトへの参画は、製鋼工程における水素利用の礎となり、鉄鋼業界における脱炭素化に向けた最初の一歩となると考えております。